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2月22日の東京株式市場の日経平均株価が、バブル期以来、超えることのなかった史上最高値を約34年ぶりに更新した。3万9098円で取引を終えた。
平成から令和に至りようやく果たしたバブル期超えは、「失われた30年」とされる日本経済の長期停滞が転換に向かう兆候の一つでもあるだろう。
株式市場は年初来の上げ幅が5千円を超える急騰を続けている。一部では過熱感も指摘されるが、株高を企業経営の追い風にすることが肝要だ。企業価値を高める取り組みを一段と進めて成長力に磨きをかけ、民間主導の力強い経済の実現につなげられるかが問われよう。
平成元年末につけた最高値は往時の日本経済の勢いを象徴するものだった。その後のバブル崩壊や長期デフレで停滞が続いた現在の経済状況は当時と大きく異なる。物価高に伴う個人消費の低迷といった懸念は足元の株高でも変わってはいない。
そんな中で国内外の投資家の目が日本株に向かっているのは好ましい動きだ。背景の一つには、中国経済の停滞に伴い海外投資家を中心とする資金の流れが中国から日本に移ってきたことがある。東証に上場する株式の時価総額の合計は上海証券取引所を抜いて3年半ぶりにアジア首位を奪還した。
値上げの浸透や円安による海外収益の改善などで企業業績が上向いていることも大きい。特筆すべきは、東証が昨年、資本効率や株価を重視した経営改革で企業価値を高めるよう要請したことだ。企業の自社株買いや増配、企業間で株式を持ち合う政策保有株の売却などが進んで海外投資家にも好感された。
投資できる金額などが大幅に拡充された新しい少額投資非課税制度(NISA)もスタートし、株式に対する個人投資家の関心が強まっている。「貯蓄から投資へ」の流れを確かなものとし、株式市場をさらに活性化することにも期待したい。
企業が株式発行で調達した資金を効率的に活用することを通じて、成長分野を中心とする経済の発展を促すことが市場の役割だ。経営実態からかけ離れた株価の過熱には注意が必要だとしても、資本主義経済の基盤をなすのが株式市場である。株価が史上最高値を更新したのを機に、市場の活性化に資する企業の変革をさらに進めたい。
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2024年2月23日付産経新聞【主張】を転載しています